セル画について調べてみた!
セル画はかつて、アニメの主要な制作方法として用いられていました。
現在ではデジタル描画に取って代わってしまいましたが、手描きで作られたセル画は現在でもコレクションとしての価値を持っています。
今回はそんなセル画について調べてみました。
セル画はセルアニメといわれるアニメの制作方法で使われる画材です。
セルは透明なシートでセルロイドという素材から作られていたため、セルと呼ばれるようになりました。
背景画を紙に描き、その上にセルに描いた絵を複数枚重ねて、動く部分のみを差し替えていくことで、動きを出していく表現方法になります。
分かりやすくいうと、パラパラ漫画のような感じです。
セルの素材には、1910年代〜1950年代はセルロイドが使われていました。
セルロイドは映画のフィルムにも使われている素材でしたが、熱に弱いため自然発火するリスクがあるというデメリットがありました。
そのため、不燃性素材の開発が進められ、1950年代からはトリアセチルセルロース(TAC)という素材が使われ始めました。
日本のアニメは世界中で人気で、今や日本の文化ともいえますが、初めてセル画によりアニメが制作されたのは日本ではなく、1914年アメリカでジョン・ランドルフ・ブレイが初だといわれています。
その時は背景画をセルに描く方法がとられていましたが、同じ年にアール・ハードが背景を紙に描く方法を考案し、それが普及していきました。
日本では、1927年に大藤信郎が「鯨」という影絵アニメで一部セルを使用したものが初だといわれています。
それ以外は、1930年代ではまだアニメは切り絵で制作されることが一般的でした。
セルアニメが切り絵アニメよりも良いことは知られていましたが、まだアニメはそこまで普及しておらず、制作スタジオの規模も小さかったため高価なセルを導入できずにいたのです。
その後、日本では、カメラフィルムで有名な富士写真フィルムが発売していたものが独占的に使われ始め、セル画が普及していきました。
1985年代ごろからは、アメリカとの合作で作られたコダック社のTACが、価格が安いということで使われることもありました。
1990年代後半からは、デジタルの描画技術が発達したことで、アニメにも取り入れられるようになってきました。
2000年に入るとよりその動きは強まり、フルデジタルで制作する会社が増えていきます。
これにより、セルの入手が難しくなっていくことも懸念され、現在ではほぼすべてのアニメがデジタルにより制作されています。
セル画式アニメは前述の通り、パラパラ漫画のように絵を少しづつ動かしていく方式をとりますので、似たような絵を多く描く必要があります。
そのため、トレースという作業が欠かせません。
昔は手作業でトレースされていましたが、後にトレースマシンという紙に描かれた絵をセルに転写できるマシンが導入されました。
トレースの工程では線画だけをトレースし、次の工程で彩色します。
トレース後は彩色を行います。彩色に使われる塗料は専用の塗料である「アニメカラー」というものでした。
アニメカラーはビニール系水性塗料で、色の数は少なかったものの、特注カラーを発注することも可能でした。
着色はトレースした線画とは反対の裏面に着色します。
そのため、線画の輪郭線はそのまま残ることになります。
彩色は複数人で行うため、色を統一させ段階的に表現する方法がとられていました。このような色の塗り方はアニメ塗りと呼ばれ、現在ではデジタル絵の着色にもこの技法が使われることがあります。
アニメカラーは水性ですので、水洗いすることで、セルを再利用することが可能でした。
1本のアニメに使われるセルは大量にあるため、コストを抑える目的で使用済みのセルは洗浄した後に再利用されました。
しかし何度も使えるというわけではなく、洗浄に薬品を使っていたため、セルがシワになってしまったり傷がついてしまったりで、2〜3回しか使えませんでした。
このセル洗いの工程は、主に新人が行うことが普通でした。
セル画発祥の地であるアメリカですらセル画は高価だったため、セル洗いは行われていました。
しかし価格が低下してくると再利用したセル画の傷が目立ってしまい、テレビに表示したときに見た目が悪くなることから、セル洗いをせずに使い捨てされるか、商業利用目的などで使われるようになりました。
セル画は廃棄・保管されるほか、映画の初回放映などでファンへのプレゼント、記念品として提供されていましたが、コレクターなどから人気が集まり、アニメショップなどで販売されるようになりました。
デジタルに移行した現在でも、ファンへのプレゼントなどでセル画が作られることもありますが、これはもちろん実際のアニメでは使われていませんし、ほとんどのものが印刷物です。
前述のように、以前はプレゼントや購入により入手することができたセル画ですが、現在では、当時使われていたセル画を入手するには、専門に取り扱っている店で購入する、譲渡してもらう、ネットオークションやフリマで購入するなどの方法があります。
時代の変化により、様々なものがデジタルに変わっていきます。
そうなると、アナログのものは価値が高まってきて、入手が難しくなったり高額で取引されるのが普通です。
セル画も例外ではなく、特に現在でも人気のアニメは高額で取引されることもあります。
もしセル画を持っているなら、いくらになるのか確認してみるのもいいかもしれませんね。
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